ママ起業vol.4 | ママになっても変化しない。だって夢を変える必要はないから

18.03/05-Mon/住まい

“TVの仕事は楽しかったし充実してた。でも夢を見つけちゃったからフリーランスに”

 

美術大学卒業後、TV局で9年間美術デザイナーとして「ミュージックステーション」や「やべっちF.C.」「愛のエプロン」などの番組のセットデザインを行ってきた。TV局の仕事は楽しく充実していたが、フリーランスに転向したのは、さらなる夢を見つけてしまったから。今日は、2児の子育てをしながら、フルタイムで空間デザイナーとして働くtamako☆さんにお話しを伺いました。

 
 

“「シルク・ド・ソレイユ」の衝撃、「北京オリンピック」の計り知れない感動”

マーク・フィッシャー(Mark Fisher)氏事務所にて

Showビジネスの最高峰ラスベガスで見たシルク・ド・ソレイユの「KA(カー)」。なんだかわからないけど、劇場に入った瞬間、涙がぽろぽろ落ちて、最後まで涙が止まりませんでした。空間にやられてしまって。見終わって「TV局やめなきゃ」と思いました。この「カー」を手掛けたのは、マーク・フィッシャーという世界的にも有名な英国のセットデザイナー。そして、弟子入りしなきゃ!と、旅の一週間後、「私、イギリスに行くわ」と旦那に告げたんです。すると「そっかーイギリス天気悪いんだよな~」と、一緒に行く気で(笑)、私が何か言いだすことは予想していたそうです。

そしてまずは、マーク・フィッシャーにつながる方法を考えました。六次の隔たりとは良く言ったもので、本当に、4人目にはマーク来日時にアレンジするという方に出会うことができて(この時は5次ですが)。そこから2~3週間後になんと偶然にもマークが来日するという連絡を受け、ほんの数分ではあったものの対面し、意思を告げ「日本でやるときは一緒にできたらいいね」との会話も叶いました。

(ブログ:「マーク・フィッシャー氏との出会いから別れまで」
(ブログ:「人生が変わったラスベガス」会場入りから終わりまでセットデザイナーが感じたこと)

 

その後、北京オリンピックの開会式をマークが手掛けると聞き、自分のこの目で見たい!どうしても見なくては!とじたばたしたあげく、奇跡的に知人を通じて1枚だけプラチナチケットが入手でき、会場へ!何万人という観客たちがスタジアムの中でも外でも期待・喜び・感動を受けている様を目にし、”世界中の熱”を体感して、「これをやりたい。やらなきゃ」と。

(ブログ:「北京オリンピックの開会式」 空間デザイナーが感じた、臨場感溢れる開会式)

 
 

“全ての起こることには意味がある”

フリーになって初めていただいたお仕事「笑福亭鶴瓶落語会2008」のセット

その後、マーク・フィッシャーのいるイギリスへ行こうと、(何か約束があったわけでもなんでもないのですが)退職して短期留学の準備を進めました。その出発直前にまさかの留学の手配を頼んでいた会社が倒産。私自身、「起こることには意味がある」と考えるタイプで、留学費用も戻ってこないし、これは、「今は日本で働けということなのだ」と日本での仕事に切り替えました。日本でがむしゃらに働こうと。するとまず、テレビ局時代のつながりから、笑福亭鶴瓶さんの落語会セットのお仕事を頂き、またいくつものお声がけを頂くご縁に恵まれ、今に至っています。

(ブログ:フリーになって初仕事「初めての落語セット」をデザインした時のtamako☆さんの出来事はブログへ)

 
 

“小さな課題を一つ一つ、全力で成功していくべき。それが大きなゴールに繋がる”

「オリンピック・パラリンピックの開会式」だけでなく、どんな目標にもいきなりそこに辿り着けるわけではなく、先の読めない大海原に漕ぎ出していくつもの小島を渡る先に、目指す新大陸、最終ゴールがあると思っています。そのためには、一つ一つを全力で成功していくべきで。もし、選ばなくてはいけないとき、判断が必要な時は「どっちが明るいか?」「どっちが楽しいか?」で選びます。そして全力で成功に向かうべきだと思っています。もし判断が間違っていたとしても、間違えた経験を積んで、同じ判断ミスはしなくなる糧になるだけだって思うんです。

 
 

“フリーだからこそ、自分に何ができるのかを「強く」「明確に」伝えることが大切”

「笑福亭鶴瓶落語会2013」のセット(撮影:大西二士男)

フリーになったら仕事は降りてこないので、「この人と一緒にやりたい」とどれだけ思ってもらえるかが大切だと思うんです。そう感じてもらうためには、自分に何ができるかを丁寧に、明確に伝えることだと思います。「フリーだからなんでもやります」というのでは、自分の“思い”がおいてけぼりになってしまいます。自分ができることを伝えるのは、仕事の幅を狭めることにはならないし、「太い幹があるから枝葉のこともできる」のだと、「極めたからこそできる何か」を目指したいと思っています。

また、いつお声がけ頂いてもいいように準備もしていたい。フリーになってすぐには建築学校に通ったり、現在でも空いた時間には演劇やコンサートに足を運び、インプットの時間にしています。

 
 

“フリーになって、いろんなバリアがなくなった。意見の違いは大歓迎”

「愛のエプロン」の装飾チームと

フリーになって感じることは、TV局員という肩書がなくなったことで現場スタッフとの関係性がよりフラットになったと思います。パートナーというニュアンスが近いかもしれません。関係している各職のプロの仕事はその人たちにしかできないことだから、リスペクトしあえる関係が良い成果につながって、「楽しかった。また一緒にやろう」となるのだと思います。だから、意見の違いは大歓迎。よりよい100パーセントの物を作り上げるためには、異なる目線の考え方も大切だと思います。TV局の垣根を越えて仕事ができるのも、新しい発見がたくさんあってすごく楽しいです。

 
 

“「ママ」であることを言い訳にしない。夢をあきらめる必要はない”

「オリンピック・パラリンピックの開会式をデザインしたい」という目標があって、ママになったからって諦める必要はないと思うんです。子どもが小さいと、手がけられる仕事の量が3分の1になったりもします。その瞬間できない仕事もある。ペースも遅くなる。時間がないことがもどかしくて悔しいことも。でも、それが夢を諦めることにはならないんです。今できることを全力で成功し続けることが目標に繋がると思います。

子育ては、いつだって手がかかるし一つ悩みが消えてもまた次に出てきます。長男はやんちゃで甘えん坊、妹はダウン症がある、というだけで大変そうと思われがちだけど、育児はどんな子でも手がかかることに変わりはなくって。ライフステージが変わったので時間がやりくりしやすいグラフィックデザインの仕事を増やしてみたり、ダウン症の啓発活動にも積極的に取り組んだりもしました。でも、そこであらためて強くなった思いは、「自分は空間デザイナー」ということ。子どものせいでやりたいことを諦めるのは、子どものためにはならないと、そう思います。子どもとサポートしあうことで、夢に近づいていけたらいいなと思います。

 
 

“独立起業して、フルタイム。子どもとの時間は長さじゃなくて「楽しい!」と思ったらそれが自分の正解”

■理想的なスケジュール

というのが、理想のスケジュールですが仕事が入るとぐちゃぐちゃです(笑)。仕事によっては夜間になることもあり、その時は家族にもサポートしてもらいます。

■例えば、現場に行く日などは
11:00~22:00 外での仕事
23:00  帰宅、入浴、子供の明日の準備など
25:00 メールなどもう一仕事
26:00 就寝

■または、外には出なくても、仕事がたてこんでいる場合は
11:00~18:00 仕事
18:00 長男帰宅
19:00 長女お迎え(保育園で夕食をたべさせてもらう)
19:00 夕食
19:30 お風呂
20:15 遊び(相手をしながら家事)
20:45 読み聞かせして寝付かせ
21:30 しばし休憩、する間もなくダッシュで仕事再開(笑)
~28:00
28:00 就寝

子どもには、自分が働く姿を楽しそうに見てほしい。だから、家にいなかったり忙しくしているのはネガティブなことではなくて、親がどれだけHAPPYにしているかに尽きると思うんです。何かを犠牲にして、それを何かのせいにしたり、我慢することを無くしたい。日々の生活にチューニングにチューニングを重ねて、どこにどう時間をかけたら、何を大切にしたら、家族みんなが気持ちよく笑ってすごすことができるか、自分たちのベストバランスを見つける。それは、時間の長さではなく「楽しい!」と思ったらそれが自分たちの正解だと思います。

 
 

“子育てで大切にしていること”

簡単な言い方ですが、一人の人としてみる。ということです。「この子はこういう子」とかいうのは親の思い込みで、その子は、自分とは異なる考えを持った一人の人だと思うのです。基本的には「話せばわかる」「個を大切にする」「違う考えを楽しみに捉える」。出産・子育てって、自分の人生という冒険において「また新しいキャラが増えた!(笑)」という出来事だと思うんです。それからもう一つ、家は楽しいところ、Happyなところだと思ってほしい。と思っています。

 
 

“ダウン症のこと”

 

ダウン症の告知を受けた親ごさんが暗い気持ちになってしまう、落ち込んでしまうというのは、それまで思い描いていた未来とはあまりに違うからだと思います。でも子育てで思い通りにいくことなんてないのだから、子供にダウン症があるからといって他の子と何かが違うということではないと思うのです。障がいという言葉が表すように、世の中のイメージがネガティブなものだったとしても、本人たちにとっては“ダウン症がある私”はみんなと同じで普通に明るく楽しく生きています。今は、障がいではなく、「スペシャルニーズ」と言っていますが、子どもたちはダウン症に限らずみんな、事の大小はあれ、何かしら大人や周りの助けが必要だし、大人でも助けが必要な人もいます。そんないろいろな人がいて、社会があるということが普通の世の中になってほしいと、ダウン症の啓発活動にも力を入れています。

その一つとして、ダウン症のある人たちの、ほんとうの姿とすてきな魅力を、軽やかに楽しく世に伝えたいという想いからキャラクター「ニポとなかまたち」をデザインしました。仲良し3人組のニポ、ニーニャ、ピーブーです。それぞれがダウン症のある人たちにやや多く見られる特徴をもっています。「ダウン症やスペシャルニーズのある人たちの活躍できる場が広がっていきますように」という願いをこめて、目下これからのニポたちの活動について鋭意計画中です。

「ニポとなかまたち」の活動と、ほんとうの魅力についてはコチラ☆https://niepostore.official.ec/

 
 

“軸をもって、軸に立ち返る”

私がやるべきことは「大勢の人がHAPPYになるモノを創造すること」。空間デザインもキャラクターの展開もその軸からぶれずに、全力で楽しんで取り組んでいきたいと思っています。

 
 

“インタビュー後期”

私、コトダマを信じるんです。というtamako☆さん。でもお話を聞くうちにそれは、コトダマにして、発信して、その言葉に責任をもって、突き進んで、実現しているという、ふわふわしたコトダマではなく「有言実行」に近い印象でした。ママになったらその時すぐにはできないこともある。でも諦める必要もない。スローになったって、準備はできる。そう話してくれたtamako☆さんの力強い言葉。そして仲間はみんなパートナーという明るい人柄が魅力的でした。

「明るいほうへ。楽しいほうへ。」迷ったときに思い出したい言葉です。

 

“プロフィール”

tamako☆

武蔵野美術大学を卒業後、テレビ朝日に入社。「愛のエプロン」「やべっちFC」「ミュージックステーション」など数多くの番組セットをデザインしたほか、テレビ朝日のロゴ企画開発にも携わる。現在はフリーでテレビ、舞台、コンサート等のセットデザインを手がけるだけでなく、グラフィックデザインやイベントディレクションなどの経験も活かし、空間全体をHAPPYにデザインするデザイナーとして活動。独立当時からの目標は「いつかオリンピック・パラリンピックの開会式の空間デザインをする」こと。
長女にダウン症があることから、スペシャルニーズがある人のための活動、「多様性のある社会」の実現のためにも活動。
http://tamakodesign.blog.fc2.com/


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専門商社で営業職に従事、その後出版業界でディレクター・ライターとして勤務。リアルな情報をリアルに伝えることを大切にしています。現在2児の母。子育てサークルの代表。
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