育パパインタビュー|共働きパパの育児論

18.04/12-Thu/住まい

“共働きパパの仕事・家事・育児”

最近、育児に積極的なパパも多くなってきました。共働き夫婦の場合は特に、家事・育児については各家庭でのベストバランスがあるようです。今日は、フルタイムでバリバリ働きながら、家事を分担し、子どもの成長を子どもと一緒に(時には子ども以上に)楽しむという、本気で育児と家事も担当している㈱ベネッセコーポレーションの鷲巣弘明さんに育児とお仕事について伺いました。

 

■子育てで大切にしていること

“1「大人は大人をがんばる」”

かこさとしさんの言葉です。親としてがんばらねば、という気負いから解放される言葉であると同時に、ひとりの人間として自ら成長と変化を求め続けるのだ、と気を引き締める言葉でもあります。仕事でも、生活の中の些細なことでも、ひとつひとつ、真正面から丁寧に向き合い、やりきることを大切にしています。

 

“2「対人関係は鏡のごとし」”

日々の生活の中で、子どもの言動や態度に何か変化があった場合は、まず親の心境・環境・ストレスなどの変化の要因が無かったかを考えてみるようにしています。保育園の頃を振り返ってみると、こどものぐずりの要因が、親にも起因していると感じることが多くあります。子育てを通して、自分の心の状態が、いかに対人関係に影響するのかを再認識しました。普段の仕事の中でも、何か物事がうまくいかない時には、自身自身にも何か要因があるのではないかと謙虚に考えることで、コミュニケーションの取り方も変わりました。

 

“3「親子で一緒に遊ぶ」”

常に親子で遊んでいられるわけではありませんが、どうせ遊ぶなら、大人は、他のことをしながらの「ながら遊び」でなく、一緒に全力で遊ぼうと決めています。
とはいえ、ごっこ遊びなど、途中で大人が飽きるような遊びのときには、ひと工夫します。
「ちょっとムード盛り上げ楽団呼んでくるわ」と言って、普段ちゃんと通しで聞けていなかった楽曲のアルバムを大き目な音でかけて気分を盛り上げて、自分自身も楽しくなる工夫をしています。それでも疲れた場合は、素直に伝え・・・休憩させてもらいます。

 

“4「待つ」”

親が急いで答えを求めたり、決めきってしまったりしないように、できるだけ待つようにしています。こどもは黙っていても、頭の中であれこれ考えていたり、表情や動作で教えてくれたりと、表現は様々です。大人は、大人の時間のスピードに慣れてしまった都合で、ついついものごとを急ぎがちです。待ちきれずに、同じことを繰り返し言ってしまうこともあります。
子どもと向き合うときは、意識的に待つことを心がけています。待つことで、心の中にあるものをうまく取り出して、表現する手助けができればと思います。

親「(描いた絵について質問)ここに描いてあるもの、なあに?」
子「・・・・」
親(なにか考えているな、、、しばらく待つか)
子「・・・・(40秒経過)」
子「20ぽん」
親「20本?」
子「このこは20ぽんのあしで、はしるの」
親「そりゃずいぶんあしがはやいだろうね、よく考えて教えてくれてありがとうね」

 

“5「多様であることをもっと”あたりまえ”に」”

自分自身も人間40年目の修行中の身なので偉そうなことは言えませんが…「世の中は実に多様なのである!」ということを伝えたいです。たとえば、世の中にあふれる様々なテクノロジーや情報に対しても、特別扱いせずに、「たくさんのうちのひとつ」として向き合ってほしいなと考えています。ですから、デジタルゲーム、テレビアニメ、マンガなども、絵本を読んだり、積み木で遊んだりすることと同じように扱い、楽しむようにしています。ある日の「今日は何して遊ぼうか」に対するこどもの答えは「絵具でお絵かきしようかな」でした。テレビゲームなど、刺激の強いツールが選ばれるのかなと思っていたので、意外な答えでした。

人間関係や異文化コミュニケーションなどにおいても「多様」であることが、できるだけ「あたりまえ」なこととなるように、私自身もこれからもたくさんの「多様」の中にありたいと思います。

 

“6「二番目に好き」”

どこかの歌詞であったようなこっぱずかしいセリフではありますが。「妻が一番に好き、こどもが二番目に好き」です。妻が笑顔でいること、妻が家庭でも社会でも活き活きしていることが、家族みんなを笑顔にします。男児と父は、つい兄弟のように仲良くなってしまい、母を寂しがらせる場面が多々あります。我が家では、キャンプ、マラソン、川遊びは、父子だけのイベントです。でも、こどもにとって本当の心の拠り所であり、甘えたい先は、お母さんであることは間違いありません。子どもが大好きなお母さんを、私も負けないぐらいに大好きだと表明することは、子ども対しても大好きだよ、大切だよ、と伝えることと同じだと思います。

 

“7「選択」”

人生は、選択の連続。自分で判断し、自分の意志で選択する人生であってほしいなと思います。子どもが年少の頃、せっかく上手に描いた絵を黒色で塗り重ねてしまって、親としてすごくショックだったことがあります。でも、後でよく考えてみたら、それは「親の期待する絵の描き方を、子が選択しなかったことに対してショックだったのだ」と気づきました。絵は心の排泄物、であると聞いたことがあります。あの時、黒色を塗り重ねた気持ちを、じっくり聞いてあげたらよかったな…と振り返って思います。

 

“8「いいパパ、は続かない」”

休日に仕事の都合で、家族の時間が確保できないことがあります。そういう時は「午前中にやりたい仕事があって、お父さんに時間をくれ」などと素直にお願いするようにしています。また、自分が疲れている時や、余裕が無い時に、こどもに理不尽に怒ってしまうことがありますが、そんな場合は、ひとりの人間として素直に謝るようにしています。「ごめんね、お父さんは疲れてイライラしていたのかもしれない。」常にいい親であることなんてできません。無理をせず、自分の気持ちをいつも素直に伝えられる状態でいたいです。

 

■家事・育児と仕事のバランンス

“ベストバランスを見つけるまで、いろいろあって今に至っています”

子どもが生まれてから7年間、朝ご飯の支度を担当しています。子どもが小学校に入学してからは、週2回学童のお迎えに行っています。その日の夜は、洗濯・夕飯・片づけ・入浴・寝かしつけまで一直線に進みます。今ではスムーズに分担できるようになりましたが、そのバランスを見つけるまでにはひと山ふた山と苦労がありました。例えばキッチンの使い方について、妻が大切だと考えるルール的なことを知らずに不本意な配置にしてしまったことで言い合って、気分を害することもありました。洗濯ものを干すときにも、それぞれのやり方があると思うのですが、相手のやり方が気に食わなかったり。でも、その不一致の瞬間は気分を害しても、お互いに思いやりながら、何とかネガティブな考えを、ポジティブな視点で塗り替えてしまおうと工夫しています。例えば「キッチンはやっぱり妻の大切な場所だから、妻ルールを尊重でキマリ!」と考えたり、私の性格を考慮してか、一度指摘したことを繰り返し言い、詰め寄るようなことはしません。そうやってお互いに少しずつバランスを見つけながら、何とか前に進んできたように思います。

 

“1日のスケジュール”

支度などで子どもがグズるとしたら、それは時間が足りなくて「早くしなさい」と急かさざるを得ない状況が多いように思います。自分自身にゆとりがある時は、子どもをむやみに叱ったりすることがないので、朝は早めに起床してゆとりをもって支度をするように心がけています。
確かに子育てと仕事を両立させるのは大変ではありますが、子育てをするようになってから、いかに仕事を忙しくやってたのかということに気が付きました。今は、一旦立ち止まり、大切なものを見過ごさないように心がけています。

 

■仕事

“現在のお仕事内容”

こどもちゃれんじとして初の試みである、年中から年長のお子様を対象に「こどもちゃれんじ サイエンスプラス」を開発しています。「キット・映像・ガイド」の実験セットをテーマ別に、年6回お届けします。教材の活用の中には、子どもがふと立ち止まって考え、疑問を持つような「引っかかり」を設けています。じぶんなりに「考え」「確かめ」「理解し」さらに「自分で工夫してやってみる」という科学的な思考や行動を、親子で楽しみながら体験いただけるように、日々企画を練っています。

 

“仕事で大変なこと。開発へのこだわり”

こどもチャレンジの絵本製作、電子玩具の開発など様々なプロジェクトに関わっています。現在のメインはサイエンスプラスの開発です。業務の山が重なって、残業することも多いです。幼児向けにサイエンスをテーマにした教材群を提供するのは、こどもちゃれんじとしても初めてであり、小学校のように、指導要領もない状態ですから、すべてがゼロからの開発です。繰り返し試作し、こどもたちに使ってもらって、また改善。子どもは素直なので、すぐに反応で分かります。それは言葉であることは少なく、止まった指先であったり、笑顔であったり、目線であったり。だから、親子に会って、直接活用の様子を観察することを大切にしています。

開発については、成功体験のポイントをどこに定めるか。ことばの使い方や実験方法などは、いかに身近で分かりやすく楽しい教材として届けられるか。例えば、例えばアイスづくり実験であれば、「冷却する」ではなく「ひえひえパワーをつたえよう」という具合に言葉とイラストとセットで伝えるなどです。
よりよい教材になるよう、制作の各段階で、監修の先生のご意見をいただいたり、親子モニターの様子を考察することを繰り返しています。毎号の実験が楽しみになるようなテーマ選択や提供順、写真の見せ方や事前告知の仕方にもこだわっています。

 

“今後の幼児教育におけるサイエンスのあり方”

今、親世代が子どもの頃には経験したことがないほどに速く、激しい変化が起こっています。プログラミング、人工知能といった言葉が、教育にも身近なキーワードになりつつあります。情報があふれ、不確実なことが多い世の中だからこそ、自ら考え、自ら選び、自ら道を作ることが、未来を生きる力になると考えています。
「サイエンスプラス」は、科学的な知識や正しさを親が子に一方的に教える教材ではなく、科学的な思考を通して、自ら考えることの喜びや、「できた!」という小さな成功体験を親子で重ねるきっかけとなる教材を目指しています。

 

“仕事のやりがい”

大切な写真が1枚あります。当時年中の息子がベゴニアの花に手を伸ばしている写真です。近所の植物園に、ベゴニアの切り花を浮かべた水槽がありました。同じ種類でも色や形が違うこと、押し沈めても浮かび上がてくること、花びらの表面を水玉がころころと流れていくこと、気づいたことを親子で教えあいました。同じ花を見ていた会話の少なかった別の親子も、いつの間にか会話に加わって、みんな同じ目線で、水に浮かぶ花をじっくり観察しました。水に浮かべた切り花は、親子で興味や疑問を広げる課題提示となり、互いの会話が響きあうほど良いサイズの水槽は、学びあいの場となりました。全国のご家庭に、こんな問いかけや、学びあいのきっかけをお届けできたら、といつも心に留めておくために、手帳を開くと一番に見える位置に写真をはさんでいます。

 

■プライベート

“休日のお絵かきイベントなどは、商品開発のアイデア源泉にも”

お絵かきイベント「いろいろモンスター」

職業柄、親子の会話、子ども同士の会話にはつい耳を傾けてしまいます。子どもの心の奥からまっすぐにとびだしてくる短い言葉は、大人が忘れかけていた大切なことがちりばめられています。商品開発の源泉は、自分自身の常日頃のアンテナと子どもたちの純粋な言葉の掛け合わせであることが多いです。

 

“こどものことば(息子5歳のころ)”

(真夏のカブトムシ探しにて)
・いるとおもって さがさないと でてこないよ

(うまれてきた大量の赤ちゃんカマキリを見て)
・せかいがいえで うちゅうがまち

(他界した祖父の話の時)
・そらがあおいのは てんごくに うみがあるから

・おとうさんは おおきくなったら なにになるの?

・がんばるって なに?

・やまのおくの ひがでていないころのあめが せかいでいちばんすき

 

“「考えるって楽しい」”

※上左:漢字はどうやってつくられたの?上右:自作の植物図鑑
※下左:朝採った種を数える。下中央:色水実験。下右:化石の発掘体験

インターネット等で、なんでも手軽に「知る」ことができる世の中ですが、「自分でやってみて、腑に落ちた」という達成感、実際に「モノに触れる手触り」「感覚」を通して、「考えるって楽しい」ということをお伝えしていければと思います。

 

“インタビュー後記”

インタビュー前は、「男性でフルタイムでバリバリの方が、本当の意味で育児に参加してるのか?」などど穿った考えでいた自分が恥ずかしいほどの、育児への自然な取り組みに脱帽のインタビューでした。
「子育てで大切にしていること」の1~7は、インタビューお伺い時に、鷲巣さんがお手元にご用意して下さった言葉たちです。事前に内容をお伝えしていたものの、丁寧にご準備頂いてとてもスムーズにお話を伺うことができました。また、同席いただいた同僚の方が(お子さんが幼児さんで)、「サイエンスプラスの開発が鷲巣さんだと知って、申し込みました」というお話もあり、鷲巣さんの信頼の高さを感じる一幕でした。
目まぐるしい世の中の動きや、日頃の忙しさに追われてつい流してしまいそうな子どもの言葉や、夫婦のバランスも、時々立ち止まって丁寧に考えてみる。そんな気づきを下さったインタビューとなりました。

 

“プロフィール”

鷲巣 弘明

株式会社ベネッセコーポレーション
グローバル商品開発部
サイエンスプラス じゃんぷ編集長

~経緯~
同志社大学文学部英文学科(選択体系機能言語学専攻)
2001年入社
2001年~小中学校事業部 マーケティング担当(行政、販売店、学校営業)
2005年~教具開発部 高校講座・中学講座・小学講座の教具開発
2014年~こどもちゃれんじ玩具開発 サイエンスプラス 年中教材年長教材


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専門商社で営業職に従事、その後出版業界でディレクター・ライターとして勤務。リアルな情報をリアルに伝えることを大切にしています。現在2児の母。子育てサークルの代表。
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